著者より
これは、主人とともに歩んできた楽しかった人生の終わりのお話であります。けれども同時に、残された家族にとりましては、愛する人を「うつ」という敵によって奪われてしまった、悲しみの人生の始まりのお話でもあります。私たちの苦悩の日々は、ここから始まったのです。私たちの人生は、それ以前とそれ以後では、全く別なものになってしまいました。私は、主人の死さえも、愛する神様にお捧げいたしました。けれども、信仰を持ってはおりましても、現実問題と致しましては、生身の人間でありますから、心に大きな傷を抱えながらも、日々、生き抜いてゆかねばなりません。それは、決してたやすいことではないのです。主人の死後、私自身もうつ病にかかってしまいました。三年が経過した現在でも、完治してはおりません。けれども、重たい心を引きずりながらも、子どもたちを養うためには働かざるを得ないのです。それが現実です。 今、苦しんでおられるあなたに、お伝えしたいことがあります。自死は、決して美しい死の形ではありません。神は、決してそのような死の在り方を望んではおられないと、私は思います。なぜなら、自死遺族の悲しみ、苦しみには、真に想像を絶するものがあるからです。家族一人ひとりの心に残された傷跡は、恐らく、天の御国へ迎え入れられるその日まで、決して癒えることはないでしょう。どうか専門の医師や薬の力をお借りして、苦しみから逃れるための、別の方法を選択して下さい。家族や友人に助けていただいて、生き続ける道を選択して下さい。決して、愛する者を置いて一人で逝ってはいけません。愛する者の心に、永遠に消えない悲しみを残したまま、黙って旅立ってはいけないのです。
私の娘の言葉を借りるならば、「自死は一番安らかではない死に方だと思います。断固、断固、断固、反対です!」
どうぞこのことを、あなたのお心に留めておいていただけますでしょうか。心からお願いいたします。
2010年8月
記録的な猛暑の中、やっとアサガオの咲いた日に。
菊地律子
目次
CONTENTS
一.神様、助けて!
二.主人がいない
三.最後の伝道集会
四.お笑いのテープ
五.明るい前夜式
六.私のありがとう
七.青い空に向かって