「死にたくない」、「死後も生きたい」。この感情は信仰する者だけのもではない。生きている者が生きていればこそ持つ本能的な願望である。人類普遍の願望であって、時代にも国にも人種にもよらない。
本書の目的
人がよく死ねることは、その人の偉大な生の証明である。なぜなら、偉大な生をなした者だけが、よく死ねるからである。そして、よく死ぬためには、死の先の生に大きな希望を見いだして死ぬことである。
本書の目的は、よく生きてよく死ぬために、死の実態を理解し、偉大にされている未来の生のために準備することである。死の不安と恐怖から解放され、永遠の命のことを知って、より充実した生を生きるためである。人にとって死は不可避なものであり、誰にも必ず来る。本書の記述が目指すものは、この拒絶し得ない死を深く知り、得られた知見から、自分の生き方と隣人への接し方を学ぶことである。そして、死後への希望を得ることである。
死に対する人への神のあわれみと神の国が、いかに絶大な価値を持ったものであるかを知れば知るほど、この世の生の一瞬一瞬を大切に生きていかなければならないことが分かってくる。私たちは神の霊によって洗われ、きよめられ、義とされたのであるから、自分の救いが全うされて神の国に迎え入れられるために、この地上にいる間の生を最大限に用いたい。
本書の考察方針
科学では、生と死の間に一線を画して、両者を切り離して考える傾向がある。しかし私たちの内なる精神の生への渇きは、生と死が不連続なものではなく、その先にも続いたものであると受容するのが自然な感情である。
そこで、筆者は内なる精神の欲求に逆らわず、魂の渇きに忠実にならい、生と死はどこまでも連続したものであるとして捉え、併せてその先の神の国についても詳しく調べることにした。
主な内容
第一編 死とは何か
第一部 死に関する論考
第二部 キリスト教による死
第二編 神の国とは何か
第一部 永遠の命と神の国
第二部 使徒信条にみる死と神の国
第三部 黙示録にみる死と神の国